みなとみらい21×神奈川大学対談「新たな創造の場へ」

みなとみらい21×神奈川大学対談「新たな創造の場へ」の写真

みなとみらい21地区に拠点を構える企業の皆様に、直接街の魅力をご紹介いただくことで、このエリアで働くことの魅力に迫るインタビュー企画。
今回は特別対談として、2021年4月、みなとみらい21地区に開設される「神奈川大学 みなとみらいキャンパス」について、学校法人神奈川大学理事長・神奈川大学長 兼子良夫さんに、当団体の理事長 坂和伸賢がお話しをお聞きしました。

理事長2S.jpg

右: 学校法人神奈川大学理事長・神奈川大学長、兼子良夫(兼子理事長・学長)
左: みなとみらい21:坂和伸賢 理事長(坂和理事長)


みなとみらいへの想い、新キャンパス創造

坂和理事長:
初めまして。久々に六角橋の横浜キャンパスにまいりました。落ち着いた、ゆったりとした空間、そして豊かな自然環境のなかで、充実した学生生活を送れるキャンパスではないかと改めて感じました。
みなとみらい21地区の新キャンパスは、多様な企業や施設が集積する、横浜の都心部に立地することになります。さらなる学びの展開があると思いますが、いかがでしょうか。

兼子7.jpg

兼子理事長・学長:
本学が、みなとみらいという先進的な場所を選んだ理由の一つは立地、「場」です。
教育環境として、本学の教育プログラムだけでなく+α(プラスアルファ)がある中で学生を育てていきたい。また、産官学連携の視点においても、双方で啓発しあいながら進める「新しい教育・研究」を実現する。先進的な研究を大学だけで行うのでなく、企業との連携の中で推進したいと考えています。そういう「場」を探したとき、みなとみらいが最適だと思いました。
世界的なグローバル企業や新しく先進的な企業、同時に魅力あふれる文化的施設も、コンパクトなエリアの中に集まっている。理想的な環境です。
みなとみらいを選んだ、もう一つの理由が「歴史」です。
神奈川大学のあゆみは、創立者・米田吉盛が、横浜で働く勤労青年の旺盛な勉学需要に応えるために、1928年に桜木町に創立した横浜学院にはじまります。神奈川大学のDNAはどこにあるのかといえば、それは「横浜」なのです。本学は横浜に生まれた大学である。原点に戻ろうと。
みなとみらいには横浜港という世界的な人々の交流拠点があります。そういう場所で本学の歴史がはじまったわけですから、そこに戻って神奈川大学の原点たる国際人の養成をしっかりやろうと思ったのです。

地域と大学が連携し、新しい創造をする街へ

兼子理事長・学長:
みなとみらいは、国際交流の拠点そのもの。港もありますし、羽田空港とも近い。横浜市は産業の育成やオープンイノベーションを含めさまざま考えておられるでしょう。その中で本学をも含めた形での新しい化学反応がおこるのではないかと期待しています。


坂和理事長:
みなとみらい21地区を多様な企業と連携した「新たな創造の場」と捉えていただいていることに感謝します。
また、学生の教育を原点に、広く深い視点を持たれ大学運営に取り組まれていることに、敬意を表します。
今、みなとみらいは、宅地ベースで90%が完成あるいは工事中となっています。そこでは、1800社以上の企業が活動し、就業されている方が11万人以上。さらに8000人以上の方が住まわれています。グローバルな会社も多く活動し、ある企業では、40カ国以上の異なる国籍の方々が働いています。

また、施設機能では、これまでの商業、オフィス、ホテル、コンベンション、住宅、美術館や音楽ホールなどに加え、近年では、多くのR&D(研究所)や大規模な音楽施設の「Kアリーナ」、「ぴあアリーナ」が立地します。186haの一つのプロジェクト区域に、これだけ多様な機能が集積するエリアは、我が国はもちろん、世界にもあまり例がないのではないかと考えています。

そこに、多くの学生が学び、多角的な研究活動を進める総合大学。神奈川大学さんが街の新たなプレイヤーとなって活躍して頂くことは、エリアマネージメントの高度化や活性化の面でも、非常に刺激的なものとして捉えています。

すでに実施されている神奈川大学さんとみなとみらい地区内の企業の連携の一つですが、ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルとの実績があります。ホテルの第一線で活躍されている方々は、都市観光のあり方、ホスピタリティや海外の人との接し方など、様々な知識、経験、を持っています。そうした方々が講師として授業され、一方、そこで学んだ学生さんたちが、街の活性化に関する企画を様々な視点で提案して頂いています。

みなとみらい地区のプレイヤーが全てそろったことを踏まえまして、将来を見据え、新たなエリアマネージメントの方向性について議論を進めています。その一つに、ビジネスエコシステムの取り組みがあります。関内地区のイノベーターと行政、みなとみらいのR&D企業を中心に、「イノベーション都市横浜」としての協議会を立ち上げようと、今、準備をしています。その中で総合大学を「知」の拠点として連携強化を検討していこうという動きが出て来ています。一つの方向性としては、人材の交流です。例えば、企業の人が臨時講師としていくとか、大学の先生に研究成果を講義していただくことも考えられます。
また、海外からの学生も多いと聞いていますので、いままでとは違った、多様性を持った企業とのインターンシップの可能性もあります。さらに、神奈川大学さんでは、エクステンションスクールも活発に行われており、みなとみらいで働く方々との連携も考えられます。

神奈川大学が目指す未来

みなとみらいキャンパス(完成イメージ図).jpgみなとみらいキャンパス(完成イメージ図)外観 低層.jpg低層(完成イメージ図)4階 米田吉盛記念講堂2.jpg4階 米田吉盛記念講堂13階~ 高層階吹抜け空間(プレゼンフィールド)2.jpg13階~ 高層階吹抜け空間(プレゼンフィールド)21階 トップラウンジ2.jpg21階 トップラウンジ

兼子理事長・学長:
みなとみらいキャンパスで特徴的なのは、図書館、オープンイノベーション関連施設、ハラルにも対応する世界食堂的なカフェ、観光ブースなどが集積する低層階を広く一般に開放することです。みなとみらい在住・在勤の皆さまをはじめ、各企業の方々とさまざまな形で繋がりながら共につくりあげていきたいと思っています。

みなとみらいキャンパスにはグローバル系の三学部を集約しますので、『つねに・どこかで・何か、新しいことが起こっている』ようにしたいですね。たとえば本学ではこれまでも、フランス週間とかドイツ週間など各国のイベントをいろいろな形で開催してきました。神奈川大学は世界約170の大学と協定を結んでおりますので、各国大使館との円滑な連携のもとに、いろいろと仕掛けていく。その際も、みなとみらいの皆さまとオープンな形で対話しながら連携し、また運営していければと思っています。

ところで、本学は今年(2020年)、国際日本学部という新しい学部をつくりました。国際日本学部の存在意義とは、日本をしっかり理解した上での国際人の育成です。ダイバーシティ宣言やSDGsなどで示される「共生社会」をどう創るか。そのキーワードとして、日本の文化や日本社会で育まれた日本ならではの価値観に、いま一度、光をあてようと考えました。

本学には、オーディナリーピープル(Ordinary people)たる人達、平たく言えば、普通の人々が日本の文化の担い手であると捉える研究所「日本常民文化研究所」があります。欧米でのそれはジェントリー(gentry)や貴族ですが、わが国にはそうでない文化も根付いているのですね。
多角的な日本文化に内在する価値観や日本文化を再認識し、光をあてることは価値あることです。いわば「新しいグローバルスタンダード」を発信できないかという目論見もあります。国際日本学部を開設した背景にはこうしたこともありました。

横浜キャンパスでも新しい動きを

兼子2.jpg


兼子理事長・学長:
本学の「国際センター」は横浜キャンパスにありますが、グローバル系学部をみなとみらいキャンパスに集約するこの機に、みなとみらいキャンパスを中心とする形にしていきます。
また、現在構想中の新しい建築学部(2022年4月設置構想中)にも文理融合の考えをもつ都市デザインを取り入れていきます。都市デザインというのは、新しい価値観、人間に対する価値観を内在した形で都市を考える、新しい形の総合学問です。建築は伝統的な学問ですが、新しい教育・研究、新しい価値観や魅力を発信する学部にしたいと思っています。

構想中のこの新しい建築学部は、実験等の設備も必要なことから横浜キャンパスに設置予定です。一方で、街をまるごと一つのキャンパスととらえた空間のなかで体験型の教育を実現できる拠点をみなとみらいにもてることは、デザインや都市づくり、街づくりなど複合的な観点からいっても大きな魅力です。いずれにしても、建築学部は教育・研究内容を継続的に見直しながら、新しいチャレンジをどんどん実行してくれるものと期待しています。

実は、これらの他に、横浜キャンパスでも新しい授業が始まります。
法学部についても、民間企業や行政方面などさまざまな経験を有する方を特別な教員としてお呼びして授業を行う予定です。今までは講義とゼミナールだけでした。しかし、通常の講義とゼミナールに加えて、いま現実の世界にはこんな問題があるという、リアリティを伴ったもう一つの授業を行う。現実社会にどのような問題があるのかを現場の方にしっかり話していただいて、同時にゼミといろんな講義をあわせる。そんな時代に入りました。現実と社会と理論を重ね合わせながら同時にまわすのが、これからの法学部です。法学部という名称はそのままに、教育内容を新しくしています。

普遍的な価値は大学にとって最も大切なものですが、同時に価値の創造も大学の重要な役割です。そういう意味でも、法学部とか経済学部というのは大事にすべき学部だと思っています。

横浜キャンパスも中身はどんどん進化しています。外形的な変化はわかりづらくとも、中身は相当に変わります。神奈川大学では、創設以来これまで常に改革が行われてきましたが、このたびは、また大きく変わる節目なのだという気持ちです。

sakawa.jpg

坂和理事長:
日本文化に内在する価値観をベースとする、新しいグローバルスタンダードを世界に発信していく思いに、非常に感銘を受けました。
真の共生の社会を見つめ直す時期に来ている中で、そうした発信をされていく大学がみなとみらいに来ていただく事、それ自体がみなとみらいのステイタスのアップにつながるものと感じます。

みなとみらいキャンパスの建設にあたり、施設計画に大変力を入れていただきました。ありがとうございました。
みなとみらい地区では、街づくり基本協定が地権者の皆様の間で締結されています。スカイライン、街並み、ビスタやコモンスペース、アクティビティフロアのあり方、さらには色調など、様々な視点からのデザインコントロールがあります。その結果として、環境や防災面も含め、洗練された建築物が多くあります。
また、多様な都市活動に加え、文化、芸術、海など、建築を取り巻く多彩な要素がある、それがみなとみらいです。横浜キャンパスの建築学部の学生さんも、新キャンパスに足を運んでいただき、こうした環境の中で、新たな創造体験をされることを大変期待しています。

兼子理事長・学長:
ありがとうございます。このたびの建築学部の教員構成には民間の方も参集してくださいました。情報がオープンになりましたら、「あ!この人!」と思われることがあるかもしれません。

絶えず変革する大学

兼子3.jpg兼子4.jpg

兼子理事長・学長:

新しい学部が、それぞれの研究内容の"刷新性"だけではなく、社会が何を求めているのかを理解する。わかっている「つもり」ではなく、具体的に話を聞いたり、共に何らかを連携する中で、我々がそれを正しく把握する。そういう姿勢で対応したいと思っていますので、「共に何かできる場」もつくります。

横浜キャンパスの5階には、経済学部の先生が集まる「経済貿易研究所」があります。教員や職員が気兼ねなく立ち寄り、カフェブレイクもできるなど、公式な場ではできない話も、雑談の中でざっくばらんに聞ける環境と雰囲気があります。
欧米の大学、たとえばプリンストン大学などでも、先生同志がワイン片手に話ができる場などが、あらかじめ用意されています。机の上だけでなく、そういうところも研究そのものに対する幅をひろげ、深める場ととらえるのですね。

総合大学では、学部自体が一つの大学のような規模感ですので、ややもすれば「学部が全て」という意識になりがちです。実際、学部を越えてのオープンな場がないのが現実で、恐らくこれは日本のどこの大学でも同様でしょう。
そういう意味でいうと、みなとみらいキャンパスには本学でも初めて、横浜・みなとみらい・平塚のどのキャンパスの先生でも利用でき、また8学部の先生方が集える場を設けます。研究・教育内容だけでなく雑談もできる。そこから自然と新しい視点や研究やものが生まれるのではないかと期待しています。

教員だけではありません。神奈川大学は学部横断的に専門の授業も取れますので、極端なことをいえば、経済学部の学生が外国語学部のゼミに入っていることも、稀なことですが、あります。そんなの許されるのかと思ったら、許されていました(笑)。実際、法学部の生徒が私のゼミ(経済学部)に来たこともありましたが、やってみると自然なことでした。それでいいのです。「この学部に入ったけど、あちらの学部の勉強もしたかった」「それなら、どうぞ」というフレキシブルなところも、本学ならではの良さだと思っています。

我々が目指すのは、「世界標準の大学として、人類に貢献し、社会から必要とされる大学」になることです。
2028年に迎える創立100周年を一つの節目として、2028年には「こういう大学になる」と明確にイメージする。例えば、世界中の研究者と広く交流しながら、一方で地域からも必要とされ、企業との連携を活発に推進する大学になることを目指す。その過程において何が必要なのか、どういう学部にならなければいけないのかを見極めながら具体的なアクションを実行する。そういう形で大学として生き残り、また社会から必要とされる大学としてしっかり足場を固める。今はその改革の時期であると認識しています。

社会の要請に応える人間教育ができる教育機関に

sakawa2.jpg

坂和理事長:
神奈川大学は、駅伝をはじめ、スポーツ面でも活躍しています。今回、水泳女子がインカレで優勝をしました。オリンピック候補選手も輩出しています。こうした活躍をみなとみらい全体で、応援する雰囲気をぜひ醸成していきたいと思います。


兼子理事長・学長:
ありがとうございます。水泳部のインカレ女子総合優勝は、創部90年の歴史上で初めてのことで本当に嬉しいニュースでした。
実は水泳部には、いわゆるスーパーエリートがいないのです。それでも在学中3名の選手がオリンピック候補として選出されました。なにより素晴らしいのは、水泳部では学生スポーツの根本的なあり方を実践し、しっかりと人間教育も行っているところです。勝敗だけ、泳ぐだけが目的ならば本学に来なくてもいいですよと言っています。その中で結果を出したのですから、学生たちはもとより指導者皆の喜びもひとしおだったろうと、胸が熱くなりました。


坂和理事長:
人間教育を原点にされているからこそ、学生時代にスポーツと勉学に打ち込み、社会に出て、その集中力やチャレンジ魂をもって、活躍されている方が大変多いのではないかと感じます。

兼子5.jpg

兼子理事長・学長:
昔の話ですが、プロ野球でドラフト指名された野球部学生で、単位が足りず卒業ができなかった学生がおりました。今は、単位を取っていなければ遠征の許可も出しません。野球部そのものが文武両道という形に、方針を変えました。現在の岸川(野球部)監督は西武の選手として活躍していた方ですが、「プロで活躍できるのは短い期間。素晴らしいことには違いないが、長い人生を思えば、社会人としてしっかり生き残れる学生をつくることの方が大事ではないか」という考えのもとに指導をしてくれています。
横浜DeNAベイスターズで活躍する本学OBの濵口遥大君がドラフト1位で指名されましたが、彼は、文武両道の育成方針を見事に体現した成績優秀な学生でもありました。まさに、お手本になる先輩ですね。
本学の駅伝チームには40数名の部員がおりますが、過去に、4年生が全員エントリーした大会もありました。そんな大学は他にないのではないでしょうか。実はこの年は4年生の実力が揃っていただけでなく、日常の練習態度や勝負に向かう姿勢も素晴らしいものがありました。そうした背景もあってか、チーム全体の雰囲気も非常に良かったということもありました。
勝敗に拘るだけならば、大会に向けた学内選考の指標も方法も異なるものになるでしょうが、我々は学生スポーツ、学生アスリートのあり方として、まず人間教育重視を念頭におくことを信念としています。


坂和理事長:
駅伝で活躍した、愛媛県の宇和島東高校出身の鈴木選手でしたね?学問も優秀で人間的にも素晴らしい学生だったと伺っております。

兼子理事長・学長:
我々は選手が本学への入学以前から関係構築をはかります。ただ、高校二年の後半など若くして良い成績を出して注目される選手は、多くの場合、他大学が獲得していきます。強豪校が相手ですから勝てないです。鈴木健吾君の場合、若い時代からずっと見守り、継続して良好な関係を築けていたこともあって、本学にきてくれました。

坂和理事長:
体育の専門学部ではなく、人間科学部の学生として広く学びながら、選手生活を送らなければならない。いわば文武両道を目指されているので、多くの有望選手の入学は、難しい側面もあると思います。

兼子理事長・学長:
そうですね。人間科学部ですので、こころ、からだ、社会を総合的に学びます。本学駅伝部の大後監督自身も健康科学の教授でもあり、その知見を持って学生の心技体を常に確認しながら、学生自らの内省とともに人間教育を行うとの方針です。彼が、規律ある体育大学から、自由な総合大学の本学に赴任された当初は、本学学生の「髪は長いし、挨拶は...」などの身なりや振る舞い等に戸惑いもあったそうですが、「こういう自由な雰囲気の大学だからこその良さもある。むしろこれがいい」とプラス思考になられたそうです(笑)。

sakawa3.jpg

坂和理事長:
一流スポーツ選手が、神奈川大学を卒業し、社会の様々な立場で活躍されているのは嬉しいですね。それが真の学生スポーツの姿の気がします。

兼子理事長・学長:
実は昔、私のゼミ生がある年の箱根駅伝の出走にエントリーされたことがありました。ところが、新聞にも名前が載った当日に、別の選手が出走することになりました。
本人の無念は言うまでもなくですが、親御さん含め、ゼミ全体で上下関係含め応援するぞ!となっていたわけですからシュンとなりますよね。選手本人から私宛てに「なぜ自分は選ばれなかったのか」とメールもきました。

でも、実はこれは後々への教育としては素晴らしいものでした。落ち込んだ彼に声をかけられるのは、真摯な生き方をしている者だけです。陸上部で投擲の主将を務めていた学生が(彼はゼミ長だったのですが)、その選手に声をかけました。というより、彼しか声をかけられなかったというのが正しいところでしょうか。
その後、レースに出場できなかった彼は、就職した企業で活躍し立派な出世をしました。それを大後監督に話したら、「そういうこともある」と言っていましたね。
実際に箱根路を走った選手だけでなく、箱根を走れなかった選手、挫折を経験した選手を企業は積極的に採用しているようです。だからと言って、それを狙ってレースから外すわけではないし、出世がすべてでもないですが、実際にこうしたことはままあると。

坂和理事長:
ご両親をはじめ多くの応援してくれる人、これまでの苦しい練習などを考えると、ギリギリのところで試合に出場できなかった学生にとっては、大変大きな挫折だと思います。社会に出て、この挫折をバネにしているのですね。

兼子理事長・学長:
おっしゃる通りですね。あれほど悔しい思いはない。あれ以上の悔しい経験はそうそう無いからこそ、逆境を跳ね返し、その強さを手にした人物は社会でも十分に通用するのです。

坂和理事長:
大きな挫折をバネにできる教育方針が素晴らしいですね。

兼子理事長・学長:
私のゼミでも、最大の教育効果でした。みんなでシュンとなりながらも考える。今でも、あの時に彼が送ってくれたメールを読み返すと、涙がこぼれます。強烈な悔しさも胸に秘め、腹におさめて、自分の代わりに走る選手のバックアップを全力でするのですから。

坂和理事長:
そういうバックボーンなども、みなとみらいの皆様にお知らせし、みなとみらいのなかでも応援していきたいと思います。

兼子理事長・学長:
ありがとうございます。

坂和理事長:
大変貴重なお話をいただきありがとうございました。これまでのお話を伺っていますと、新キャンパスを契機として、物事を多角的に判断できる幅広い教養、すなわち、しっかりした知識と考える力を待った学生を育て上げたい、という一貫した信念を感じます。

兼子6.jpg

兼子理事長・学長:
そうですね。要はリベラルアーツです。スティーブ・ジョブズは「自分達はテクノロジーとリベラルアーツの交差点にいる」と言いました。そこで新しい物が生まれる、それがとても大事であると。そうした総合能力と、社会に出てからのさまざまな物事との融合で新しいものが生まれるわけですね。

坂和理事長:
素晴らしい教育が実践されている総合大学が、みなとみらいに立地することは、みなとみらいで働き、住み、訪れる人々にも凄く刺激になると思います。みなとみらい地区のエリアマネージメントの様々な機会を通じて、引き続き連携を進めていきたいと思います。

兼子8.jpg
兼子 良夫(かねこ よしお)

学校法人神奈川大学理事長・神奈川大学長
1955年9月、山形県生まれ(65歳)
専門: 公共経済学、財政学
同志社大学商学部卒業
大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程修了
大阪大学博士(経済学)

2003年より神奈川大学経済学部に勤務。経済学部長兼第二経済学部長、学校法人神奈川大学理事を経て、2016年神奈川大学長に就任。2020年9月より現職。