企業紹介インタビュー【株式会社資生堂】

企業紹介インタビュー【株式会社資生堂】の写真
3人.jpg

みなとみらい21地区に事務所を構える企業の皆様に、直接街の魅力をご紹介いただくことで、このエリアで働くことの魅力に迫るインタビュー企画。

お話を伺ったのは株式会社資生堂グローバルイノベーションセンター プロジェクトリーダー 久代哲之さんと、GIC統括部 S/PARK企画グループ マネージャー 蔵内健太郎さん、社会価値創造本部 コミュニケーショングループマネージャー 岡麗文さんです。


■将来の成長を支えるための基盤となる研究開発拠点 

Q. みなとみらい21エリアに、あたらしい研究拠点を設けることになりましたが、まずはその経緯を教えていただけますか?

IMG_8812.jpg株式会社資生堂グローバルイノベーションセンター
プロジェクトリーダー 久代哲之さん

久代さん:
さまざまな要因が重なって、みなとみらいエリアへの進出を決めさせていただきました。
理由の大きな要因の1つに、2014年に弊社の経営方針として、【R&D】【マーケティング】【人】の3つに経営のリソースを集中させていくことが中長期戦略の一環で決まったことがあげられます。資生堂は1872年に銀座で日本初の洋風調剤薬局として誕生し、科学技術に裏打ちされた製品をつくってきました。長きにわたり、多くのお客様にご愛用いただきながら、化粧品業界ではトップランナーという意識を持って研究開発を進めてまいりました。ただ、グローバルレベルで事業を進めていく中、競合他社と呼ばれる企業の技術力が上がってきているのも事実です。これから先の100年も成長を続けていく企業になるためにはR&D(研究開発)の強化が不可欠であり、研究領域の拡大はもちろん、従来の研究をより深度化させていくためにも、新たな施設を作ることになりました。資生堂には横浜市都筑区に研究施設「資生堂リサーチセンター新横浜」があり、本プロジェクトの企画時点で約550名の研究員・スタッフだったのですが、その後、人材の強化を図っており、みなとみらいの新しい研究施設「GIC」ではおよそ倍となる1,000名が共に働ける環境となります。

この規模の研究所を建てるとなると、どうしても郊外のキャンパス型研究所になりがちであり、今回の検討の段階でもそういった候補地がほとんどでした。しかし、本当にそれでいいのか?と社内で問い直すことを行いました。それと言うのも、我々は化学系のメーカーでありながら、ファッションなどの産業とも密接に関係しています。みなとみらいのような最先端の街に場を設けることで、研究員も流行に触れ、社会の空気を感じる機会が増えるのではないか? そして、化粧品を使っていただけているお客様と日常的に触れ合うことで、新たなイノベーションを創出していくという、これまでにない開かれた研究の形を具現化する場所にできるのではないか? そういった理由で、この横浜の地を選ばせていただきました。


■「GIC(グローバルイノベーションセンター)」のコンセプト  

Q. 「GIC」のコンセプトを教えてください

spark6.jpg資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)外観

久代さん:
大きく分けて3つのテーマを掲げています。1つ目が「都市型オープンラボ」。先ほども少し話をさせていただきましたが、郊外型ではなく都市の立地を活かして、お客様と触れ合いながら研究開発を行う場であること。もう1つが「多様な知の融合」。これは、自社内の人材だけで研究を行っていくだけでなく、さまざまな組織や団体とつながって研究開発を行っていく拠点にしていきたいと思っています。これまでも国内外の大学や研究機関と連携して、さまざまな取り組みを行って来ておりますが、異業種・ベンチャー企業・流通業など、これまでコラボレーションをしてきていない分野の方々との連携も強化していきます。もちろん、その知の融合の中にはこの場所に訪れていただいたお客様とのコラボレーションも含まれています。3つ目が「グローバルイノベーションハブ」です。 資生堂はヨーロッパ、アジア、アメリカと世界中に研究施設を持っているのですが、その各施設の研究成果・ナレッジをこのGICに集め、また、集まった情報・知的財産を整理して、世界中で有効活用出来るように再び各地へ展開していく、まさにハブ機能として機能していきます。 そのためにも、このGICは多様な国、バックボーンを持った人材が集うダイバーシティを体現する研究所となります。

建物のデザインも「都市型オープンラボ」のコンセプトに沿って設計されています。 通常研究所の場合はクローズドな外観をイメージされると思いますが、私たちはガラス張りのファサードを採用しました。 また各フロアを吹き抜けでつなぐことで、ビル型の研究施設でも研究員同士がそれぞれを意識し合えるデザイン設計を行っています。今回の「GIC」を作るにあたっては、多くの研究員との対話を経て設計を行っています。例えば、社員食堂を最上階に設け、最も見晴らしの良い環境でランチを取れるようにしました。また、研究所のメンバー以外でも、マーケティング部門や営業部門のメンバーが訪れた際にも、研究員やスタッフとのコミュニケーションが図りやすいオフィスレイアウトにしています。

■美の複合体験施設「S/PARK」という空間 

Q. 建物の大きな特徴でもある1、2階部分にあるオープンコミュニケーションスペースについて教えていただけますか?

IMG_8883.jpgGIC統括部 S/PARK企画グループ マネージャー 蔵内健太郎さん

spark4.jpgS/PARK Cafe(イメージ)

開業準備室.jpgS/PARK開業準備室ウェブサイト

蔵内さん:
今回、1・2階の空間となるオープンコミュニケーションスペースは、プロデュースを小山薫堂さん(オレンジ・アンド・パートナーズ)、デザインを佐藤オオキさん(nendo)に参画していただいております。コンセプトは「美のひらめきと出会う場所」とし、資生堂が掲げる"美しい生活文化の創造"の言葉通り、美を極めることを追求してきた私たちにとって、まさにその核となる出会いを創造していく場となります。訪れていただいた方々が、さまざまな体験を通じて、美と出会ったり美にまつわる何かを感じていただけたりするような、様々な仕掛けを企画検討しています。

テーマとして美味しくてbeautyな飲食を提供する「S/PARK Cafe」、サイエンスとビューティを体感できる「S/PARK Museum」、ランニングステーションとスポーツスタジオ機能を持った「S/PARK Studio」、ここでしか買えない化粧品の購入や研究所ならではの化粧体験ができる「S/PARK Beauty bar」の4つを切り口に、あらたな美と出会う場所として、多様な世代、多様な人種の方々にご来場いただけるような場を目指しています。私たちはこのような施設を研究所の中に創ることで、これらコンテンツを通じてお客様とあたらしい美の出会いを創造し、お客様一人一人と向き合うことで、様々なインスピレーションを得たいと考えています。

美の複合体験施設「S/PARK」と名前を付けているのですが、これには「多様な人々が世界中から集う"資生堂のパーク(公園)"」と「その出会いから生まれるインスピレーションが"スパーク"する場所」という2つの意味が込められています。「S/PARK」のロゴのモチーフも、中に入ってくるものと外から入ってくるものが混ざり合うことをイメージしています。人や情報、アイデアが混ざり合い、刺激し合ってイノベーションを起こしていく、そんなイメージを形にしています。


現在は、「S/PARK開業準備室」というサイトを設け、「S/PARK」をオープンさせて行くまでの過程や関わっていただいた皆さんの声などを随時情報発信しながら、オープンを楽しみにして頂きたいと思っています。ぜひ、ご覧ください。
https://spark.shiseido.co.jp/


■美を問い直すミュージアム

Q. 「S/PARK Museum」の各施設の機能を教えていただけますか?

IMG_8862.jpg社会価値創造本部 コミュニケーショングループマネージャー 岡麗文さん

spark5.jpg

岡さん:
複合体験施設「S/PARK」の2階が「S/PARK Museum」となります。1階と2階は中央が吹き抜けで繋がっており、ミュージアム空間はその吹き抜けをぐるっと囲むような設計デザインです。通常企業のミュージアムと聞くとイメージされるのが、企業の歴史などをアーカイブし展示するものを想像されると思います。弊社はすでに掛川に資料館があり、今回は「GIC」にあるミュージアムとして、紹介する視点を変え、サイエンスや最新の技術、製品にフォーカスしています。「美への問い」をコンセプトにし、実際に触れたり感じたりしながら、インタラクティブな体験を通じて、「美とはなにか?」という大きな問いに来館者のみなさまが向き合い、最後に皆さまの中に「何か」を持ち帰って頂ける場になればと思います。

ミュージアム内の空間は「サイエンス&アートゾーン」「ライフオブビューティーゾーン」「ビューティーイノベーションゾーン」「フューチャーゾーン」「ミュージアムショップ」の5つの構成になっています。特に「サイエンス&アートゾーン」では、これから初めてコスメと出会う女子中学生をコミュニケーションコアターゲットとし、なぜスキンケアが大切なのか?なぜ日焼け止めが大切なのか?そういったことを化学的に学べる仕掛けを準備しています。その他にも、ご自身の顔を撮影すると各年代のトレンドのメイクアップを体感できる"自分PV"のようなインタラクティブなコンテンツを楽しめたり、「フューチャーゾーン」では、夏休みの自由研究にできるようなワークショップを開催したり、研究員との交流も検討しています。「ミュージアムショップ」ではここでしか買えない「S/PARK Museum」ならではのアイテムを販売予定です。白衣を着た研究員も日中、2階を行き来するので、お客様との交流を通じて、新たな研究やモノづくりへとつながる、そんな双方向なミュージアムを目指しています。


■あたらしいイノベーションを横浜から

Q. さまざまな機能が盛りだくさん、本当に楽しみですね。いよいよ来年の4月にオープン予定の「S/PARK」、改めて今の心境をお聞かせください。

IMG_8827.jpg

久代さん:
いよいよですね。改めて、たくさんの方々と一緒に資生堂のミッションでもある"美しい生活文化の創造"を実践できる場が生まれることに、とてもワクワクしています。私たちとしては、建物の機能として上層階が研究所、1・2階が「S/PARK」という、別々の機能の空間がそれぞれある建物という認識ではありません。先ほどもお話したように、日々働いている研究員たちが、「S/PARK」に日常的に降りてきてご来場頂いたお客様たちとの触れ合いを通して、"次世代のひらめきを掴む場所"と捉えています。「グローバルイノベーションセンター」という名の通り、あたらしい技術や体験を通して、これまでにない"美しさ"との出会いから、ご来場頂いたみなさまの反応や表情、笑顔に触れること。そのこと自体が1つの研究活動だと考えています。

さまざまな研究を行っている研究員と、自由に話せる場所。ぜひ遊びに来ていただいて、白衣を着て歩いている人をつかまえて、話しかけていただけたら嬉しいですね。
横浜から数多くの皆さんと一緒にあたらしいビューティのイノベーションを生み出して行けたらと、私たちも本当に楽しみにしています。


今日はお時間ありがとうございました。オープンを楽しみにしております。